マンションで無線はできるか!!!

 モービルアンテナで固定運用したら・・・
 今までの環境から打って変わったマンション暮らしは見晴らしの良い景色と鍵一つで自由に出入りできる生活空間がお気に入りで快適なものです。しかし、長年連れ添ったアマチュア無線からみれば最高に不便な環境でありここでの運用はなかばあきらめていました。
 そうは言っても南に180度ひらける眺めは大阪、和歌山が見通せる環境でひょっとしたら意外と電波が飛ぶのではないかという思いを抱きました。
 また多くのアマチュアが共同住宅という環境下で無線運用をあきらめているのは単なる環境だけの問題なのか・・情熱なのか試したくなり実際に電波をだすことにしました。
 
 美観に敏感に反応する住環境は隣人とのマッチングを最大課題にしていますから、最初の実験はベランダ伝いのワイヤーを釣り竿に沿わし、夜になるとこっそり竿をベランダの外に出すという一番原始的なロングワイヤーから取り組んでみました。多くの人が同じようなチャレンジをしたことと思います。
 これをチュナーで強制的にマッチングをとるだけのアンテナですが長さが取れないため受信用としても今ひとつ満足できる結果が得られませんでした。
 その時思い出したのが一度も使っていない7MHZのモービルアンテナがガレージに残っていることでした。抽選会の景品でもらったものですが意外なところで出番が訪れました。
 
 まず私の実験機材を紹介しなければなりません。トランシーバは3台、アイコムIC−706MKUG、IC-703と、FT-817です。受信機はモニター用にIC−R20があります。周辺機器はAT-180とAH-4の両アンテナチューナーとクラニシの疑似空中線VC-519です。
 実験用アンテナは、ダイアモンドHM−6センターローディングモービルアンテナ、7/14/21/24/28Mhz帯、マルドルHFC-40L、7Mhzモービルアンテナ。同じくマルドルWT-1062、21/28/50/144mhz帯。コメットCA-HV、HF/50/144帯用で実験周波数はすべてHF帯です。
 常置場所は、海沿いの9階建て8階に位置し、南への見晴らしは抜群ですが前がJRの線路になっておりビス1本でも落下させる訳にはいきません。


 
 ベランダでこれらのアンテナを使うアキレス腱はなんと言ってもアースです。モービルアンテナには、はじめからベランダでの使用条件を満たしていないものがありますが、販売時点のカタログには記載されていないものもあり要注意です。
 マンションの手すりはアルミ製で、当然鉄筋に接地されているわけがなく最初からアースなどはあきらめることにしてカウンターポイズに挑戦しました。アパマンのスペシャリストから見ると判りきった超ビギナーなレベルからスタートしたわけです。
 アンテナ理論を説くほど優秀ではありませんが、40年間のキャリアを持つカット&トライ精神はすこぶる旺盛で、とにかく狭いベランダに電線を張り巡らせ色々実験をしてみました。
 
 ふと気がついたのはただでさえ美観に関して敏感なマンションの他人に迷惑を掛けない自分の空間といえども、配線の痕跡はあまり美しいものではありません。このままエスカレートすればエライ事になりそうな予感がして見かけの悪いものは最初から置かないことに決めました。
 そこで白羽の矢が立ったのがファジーカウンタポイズVC-519です。機器の細かい仕様はメーカーのホームページなどで確認頂きたいのですがこれを組み合わせて遊び始めました。
 

 モービルアンテナほど人の評価があてにならないものはありません。私は買ったもの、貰ったもの借りたもの・・HFなら何でもありで遊びましたが、優劣の見分けは非常に難しいものです。
 アマチュアの限られた条件下での評価はメーカーのデータと一致するとは考えられませんから、一方的な情報の信憑性は低いかもしれません。
 とにかくモービルアンテナですから過大な期待もなく私自身がどれだけ満足して遊べるかが基本でそんなに神経質にはなりませんでした。
 あれやこれや挑戦してみましたが、この環境で7MHzSSBの目抜き通りを自由に歩くのはちょっと無理なような印象を感じました。
 その代わりCWに限っていえば、朝の7MHZあたりはヨーロッパと569位でQSOでき自分でも驚いています。 
 20mタワーに7Mhzのビーム時代は飛んで当たり前という思いがあり、雑魚は追いかけないという思い上がりがありそれに輪を掛けて忙しさも手伝ってろくに運用しなかったことも反省しきりです。
 絶対絶命のマンション暮らしになってからアクティビティが上がるという皮肉な現状は自分でもおかしいくらいです。

 このモービルアンテナ遊びに味をしめてハムフェア会場でコメットのVA-30という蟹の足のようなトライバンダーを買い込み使い始めましたが、それなりに遊べます。
 2m足らずのモービルアンテナで弱いながらヨーロッパとQSOできるのですから、寸足らずとはいえ一応ダイポールアンテナですからその威力は数段上であることは間違いありません。

 ただパイルアップに参入するとか、呼び合いをするなどという無謀な挑戦は避 けたほうが無難です。原付で高速道路を対等に走ろうなどと最初から考えないことがアパマンを長く続ける基本かも知れません。

 狭い環境で遊ぶならやはりそれなりの工夫が必要で、このチャレンジ精神を忘れると完全にアマチュア無線を忘れることになりそうです。
 
 モービルアンテナはモービル運用で使わないと真価を発揮しないだろう・・と言われそうですが、正にその通りで本来の使い方のモービル運用をしなければ比較も出来ません。そんなおり、先日半日ほどのんびりドライブする機会がありましたのでさっそくベランダのアンテナから1本選んで運用することにしました。

 この年11月から運転中の携帯電話使用に罰則が適用されることになりましたが、その前々日10月30日の土曜日、FT−817、5W機、アンテナはマルドルWT-1062の組み合わせで兵庫県北部に車を走らせなました。
 この日はWWコンテストの真っ最中で21MHZはビッグガンの世界中のコンテスターが所狭しと出ています。
 モービル運用ですからあえて走りながらタイミングを見計らって呼んでみました。
 
 俗に言う「耳の不自由な方が大きな声になるという表現・・・(いまは禁止用語)」のように受信能力より送信能力が大きい局からの応答は良くありませんが、それでもかなり飛んでくれます。もちろんSSBです。

 5W機で世界のコンテストに参加する経験は初めてでしたが、原付に乗ってアウトバーンを走るような気分を味わいました。
 5W機でしかも走行しながらの運用条件はすべての意味であまりよくありませんが、結構飛んでいるものだと感じました。
 その昔実はモービル運用をしていた時期があるのです。今から35年くらい前ファイナルがまだ真空管のリグで自作のヘリカルアンテナで7Mhzに出ていました。

 こんな環境でミニパワーにも関わらず応答率が高いのは他ならぬコンテストだからこそです。しかもレポートはすべて59ですから正にコンテストの大盤振る舞いに助けられているようです。しかし本心は本当のレポートを知りたいに尽きます・・・・。
 ベランダアンテナの遊びはこれからも続きますが、40年前短波帯からスタートしたアマチュア無線ライフはやはり今もHFから離れられないということでしょうか・・・

この日2004年10月30日のログから・・

1102 BV0J        5924 5925  21Mhz SSB
1127 BN0F        5924 5925  2Mhz SSB
1136 K6IDX       5903 5925 2Mhz SSB
1150 KH7X        5931 5925 2Mhz SSB
1200 BW9/JA2PVE   5924 5926 2Mhz SSB
1210 K7SS        5903 5925 2Mhz SSB
1242 RK0AXX      5918 5925 2Mhz SSB
1247 RA9JR       5917 5925 2Mhz SSB
1334 JT1CO       5923 5925 2Mhz SSB
1412 BY4BSN      5924 5925 2Mhz SSB