中波で上手に遊ぼう

中波で上手に遊ぼうー
1.茨城放送を聴いてみませんか
2.民放すべてを聴いてみましょう
3.ラジオの価値!
4.簡単でないから面白い
5.平等でないから面白い
6.アンテナを作ろう
7.どんな受信機なら聞こえるの?
8.各地で異なる難易度
9.面白さを押しつけない
 茨城放送を聴いてみませんか 
 なぜ茨城放送を聴くのかといえば、自分の番組を聴いてみたいからです。神戸に住む私が片道5時間少しをかけて水戸通い始めることになったのは、ご縁があって土曜日夜の番組を担当することになったからです。
 前年地元のラジオ関西のパーソナリティを終え、次の企画を考えていたのですがまさか茨城まで行くとは予想もしていませんでした。我が家から送信塔のてっぺんが見えるラジオ関西は、最も強力なラジオ局です。そんな環境と比べると、茨城の県域放送を神戸で聴くにはそれなりの努力が要ります。

 単純な動機がきっかけで始めた国内ラジオの聴取は、けっこう面白くて、パソコンに向かう時間やひと息ついたときのいい息抜きであり楽しい時間です。
 私にとっては茨城放送がきっかけですが、皆さんにとって学生時代に過ごした青春の地、ふるさと・・それぞれに関わりのある土地があるはずです。その思い出の地のラジオ放送局を聴いてみるのも悪いものではありません。
 専用周波数を持つ広域ラジオ放送は、基本的に全国どこでも聞くことができます。聞こえにくいから余計にこだわりを発揮するのが、県域放送のラジオ局や中継局のラジオをどのように聞くかという課題です。
 技術的な問題もあわせてつまらないかもしれませんが、国内の民放局をできるだけ多く聴いてみようと試みるのがこの遊びですが、こだわるとどんどんその奥義に引き込まれる未知との遭遇です。


 民放ラジオ全局を聞いてみよう 日本民間放送連盟という、一般放送(民放)事業者を会員とする社団法人があります。この団体は日本初の民間放送として予備免許を受けたラジオ16社の代表が1951年に作った公益法人で現在の会員会社は203社です。
 この団体のWEBサイトをみれば、設立の趣旨や放送倫理に主眼がおかれ、ここはラジオやテレビの具体的な問題を語る場ではなくあくまで業界の約束事を一般に周知するのが目的のようです。
 ただ203社のリストが掲載されていますがどれがラジオ単独局なのかすぐには分からない位で、ラジオ局の団体は既にテレビに完全に占拠されているような印象を受けます。

 そこで、日本の民間ラジオ放送局がいくつあるのかと言う疑問を解かねばなりませんが、AM局は 47局、FM局 49局、 短波局1局が現在の数値です。この中にはミニパワーのコミュニティFM局は含んでいません。
 そこで、あなたの住んでいる場所で全国の中波AM局47局をすべてを受信することができるかという課題を与えれば、ほとんどの人が不可能と答えると思います。では、そのような事例が皆無かといえば全局受信制覇は多くの人が成し遂げています。
 その成功の陰には、相当の根気と努力、そして偶然性にも恵まれこの不確実な遊びの魅力を浮かび上がらせています。その昔のラジオ少年が、老眼鏡とともに取り組む密かなチャレンジかも知れません。


 ラジオの価値
 ラジオは、日常の情報ツールとして重要な役割を果たしています。このところ新聞を読まない若者が多くいます。この世代が新聞に求めていたのはテレビ欄で、それ以外の情報は不要だと明確に答えることからその通りでしょう。インターネットの普及で、テレビ欄に代わる情報提供が可能になり新聞の売り上げにも影響が出るはずです。
 日本人のテレビ好きは異常なくらいです。この世界は作り手の感性や豊かな才能がふんだんに織り込まれ成果物としての番組に芸術品ともいえるものが多くあります。
 最近話題のテレビ局の買い占めは、その芸術品であるコンテンツが株価という金銭に変わって、ごっそり権利者が代わる意味合いもあり業界が好む訳はありません。世界の美術品を収蔵した美術館を不動産価格で買い取るようなものですから、全くかみ合わない論理に終始します。

 さて、テレビの莫大な価値に比べラジオにはどんな評価が下されるでしょうか・・若者が見向きもしないAMラジオに何を期待するのか・・これは真剣な課題であり業界すべてが日常的に考えていることです。簡単にいえば聴きたいと視聴者がときめく番組を作ればいいのですが、そこに大きな問題があり単純ではありません。
 私のラジオスポンサーは、1部上場企業もありましたが、ラジオを取り巻くこれらの環境は日増しに厳しくなっています。今お金に余裕のある企業を想像して貰えば判りますが、最近は今までラジオのスポンサーに馴染まなかった業種が多くでています。このあたりは少しトーンを落としてお話しする機会を別に設けてみたいと思っていますが、ただ、ラジオ作りは別に若者に媚びる必要はなく、各世代の主張を別の世代が聞き耳を立てるだけでも面白いものを生み出す必要を感じます。

 最近は棲み分け文化も異常なくらい進み、電車に乗ると女性専用車、JRのサービスに夫婦一緒の割引切符などがありますが、すべてが男性不利の企画ばかりです。女性専用車は今もなじめません・・一件合理性がありそうですが、時代が生んだ実に冷たいアイデアで楽しくありません。
 第一平均寿命の高い女性に、早く死ぬはずの男性よりさらに5歳も年齢差を設けるのですから男性は圧倒的に不利です。
 このような短絡的な棲み分けをラジオに求めれば早晩崩壊の道をたどるのではないかと感じます。公園に女性専用スペースや男性立ち入り禁止などが似合わないように・・・

 また話が逸れましたが、要するにラジオが単に情報を入手するための手段であるならその方向性ははっきりしています。しかしそれに加えてラジオのサービス精神は旺盛で、各地域では色とりどりの面白い番組が放送されています。
 面白い番組を作るにはそれなりの智恵と幾ばくかの経費が必要です。聴く人が減ればこの経費を負担するスポンサーを消失します。これも自然の摂理でしょうが、失礼ながらFM放送よりずっとクオリティーの高いAM局の努力はもっと認知されるべきだと思っています。
 今残念なのは、中波の遠距離局を聴くとその多くがオールナイトニッポンに依存しており、コマーシャルを聴かない限りどこの局かわからないのが現状で寂しく感じます。
 
 中波ラジオを聴くことだけでこんな事を考えさせられるのがこの遊びの特徴かもしれませんが、やってみないと判らないこと、やってみて見つけることがいかに多いことかを改めて感じます。か。
 そんなに無理してラジオを聴いて何になるの?といわれるかも知れませんが、難しいからあえて取り組んでいる、団塊の世代はそんな時代を生きてきたから根気があるのです。


 簡単でないから面白い
 三日坊主という言葉がありますが、人間には飽きがあるから逆に文化が進むという側面もあります。しかしある程度努力を伴いながら生まれるものに愛おしさを覚えるのも事実です。
 人の評価を気にしないと言いながら、聞こえにくい中波ラジオを必死に聴くことに馬鹿なことをしていると思われているのかなな・・と思わないわけではありませんが、本来聞こえないと思われている局を聞き分ける事に時間を注ぐのがこの遊びです。
 これを無駄なことだと考えるのは、ある意味正しいのです。なぜならラジオ放送免許の精神から解釈すると本来聞こえてはいけない地域でこれらを聞くことを求めていないからです。

 中波ラジオ局の周波数割り当ては、9khzセパーレーションに変更された時も芸術的な配分が成されています。日本列島にこれだけの局を配置することは、いかに効率よい人事をもって発展する企業の担当者をもってしてもかなわない困難が伴います。その結果、ババ(下品な表現ですみません・・)を引いた・・いや強制的に疎開させられたラジオ局があり、その背景に外国局との混信や国内局同士のバッティングがあります。これだけはお上から頂いた周波数であり立場上文句が言えないのが民放ラジオの宿命でしょうか。

 この時間1116khzは、南海放送と新潟放送が一緒に聞こえてきます。このように一緒に聞こえてくるのはまだ幸せな事で、私のところでは、和歌山放送と周波数が同じである岐阜放送は、どちらかが倒産するか停波しない限り岐阜ラジオは永遠に聞こえないわけでここに面白さがあります。しかしわずかな間隙をぬうと聞くチャンスが生まれます。
 大阪、羽曳野市にNHKの300kw放送局があります。そこに住む友人によると電話の受話器を上げるとNHKが受信できるほどの電界強度でここで中波のDXをやる困難さはある意味あきらめを招くくらい悲惨です。
 私の部屋からラジオ関西20kwのアンテナの頂上部が見えます。安易にプリアンプなどを使おうものならえらいことになるわけで、この強電界から逃れるために色々工夫を凝らすのも楽しみの一つです。
 中波ラジオの聴取はできの悪い息子を育てているような根気強さが必要でこれも楽しみの一つです。弱かった時代の阪神タイガースを見守ったようなファンの気持ちがよくわかります。


 平等でないから面白い
 差別などは好みませんが、何でも平等に・・という大儀名聞で困惑したのは阪神大震災の時でした。空路東京の仲間が送ってくれた花を六甲の山越えで避難所に届けに行ったら、まず先に花の数が避難所の人数に足りているかが問われ、その条件を満たさねば配ることはまかりならん・・これはほんの一例として、同様の事例に驚くほど多く接しました。
 平等というすばらしい理念は、全員を満たすもので無ければならないとすれば、性格悪く言えば全員に満たない食料ならそれを横目に見ながら餓死を選ぶというような感じで疑問に感じたものです。
 この論理の整合性を議論するつもりはありませんが、人の心が求める平等感は単なる配分の方法論ではないはずなのにと考えさせられるできごとでした。
 
 話がそれがちですが、中波ラジオ局はいわゆる県を単位とした県域放送と、それ以外の地域を対象にした広域放送があります。そして、さらに難聴取地域に限定した中継局などその数はかなりの数になっています。いわゆる県域局のラジオは県境を堺に聞こえないのが理想ですが、電波の性質上これは避けられない宿命にあり、かえって中波DXの面白さの背景となっています。
 広域放送のハイパワー局は日本国内で単独の周波数が割り当てられていますが、県域放送の5kw局は遠距離ごとの相乗りになっていることも興味の一つです。

 いま私が担当している茨木放送土曜夜8時半の音楽番組を自宅のある神戸で聞くと5局が聞こえてきます。聖徳太子ならいざ知らず、浮き沈みする5局を聞き分けることは、普通の人ではできないことです。
 余計なことをいえば茨城放送の周波数はハズレになるのでしょうが、幸いなのは外国の邪魔がないのでラッシュアワーの電車の座席を譲り合っているような微笑ましさを感じます。嬉しいのは1197khzでは熊本放送の10kwより5kwの茨城放送が強く入ることです。

 このように聞く地点によって難易度が異なるのが中波ラジオの面白さで、ここには平等の屁理屈とか人が介在する不要な意識などは無関係で、自然の摂理のまま物事が進みそれを素直に受け止める遊びであることです。スイッチをいれればいつでも聞こえるラジオから、スイッチをいれても工夫がないかぎり聞こえないラジオも楽しいではありませんか。


 アンテナを作ろう
 中波ラジオはラジオのスイッチを入れればいつでも聞こえるように長い時間をかけて今の状況を作りました。免許の趣旨は神戸で高知の放送が聞こえるように整備されているわけではありません。
 しかし、在京の民放局は100kwの出力で日本国中をカバーできるように配慮されています。そして準キー局と言われる大都市には50kwのラジオ局があり、これも県境を越えて広いエリアを対象にしています。
 
 このように地形や経済基盤など状況に応じて送信電力が決められ秩序正しく放送業務が営まれています。そのなかで一番多く免許されているのが中継局ですが基幹局である5kwと言われる県域放送局がこの遊びの原点であり、この局をいかに聴くかがテーマとなっています。
 中波のアンテナは電線を長く張るだけで充分ですが、巨大なアンテナがないと聞こえないと思うのは間違いです。しかし最近のローカルノイズの意地悪さは想像以上で、これらを楽しむには少しの工夫が必要であると言うわけです。これらは実際に作ったアンテナをご紹介するページで一緒に考えましょう。


 どんな受信機なら聞こえるの?
 これは重要な課題ですが、過去に多くの方が聞き比べをして、その昔の「暮らしの手帖」並の公平な評価がWEB上で公開されています。
 私がいま使っているラジオはSONYのICF−7600Gと、通信型受信機アイコムのIC−R75です。さらに予備機としてアイコムIC−R20と、震災で活躍したSONYのICF−SW20、そしてレトロ趣味のHITACHI製真空管5球スーパーです。
 実際はSONYのポケット型ラジオやアイワのポケット型・・ラジカセ、コンポ、AMFMチューナー、懐中電灯内蔵型、手回し発電機ラジオ、景品でもらったラジオがゴロゴロ、おまけにトランシーバの全波受信機能・・数えれば数十機になると思います。なのに、ラジオのない家があることが未だに信じられないのです。

 どのラジオがいいのか・・放送に従事する者として特定の商品を必要以上に評価することにためらいがあるのは事実ですが、ここに掲げた最初の2機種は非常に優秀です。これに複数の自作アンテナを組み合わせることによって5kw県域局を選別するのです。
 受信機にはある程度お金がかかりますが、アンテナは時間だけの勝負です。忙しい中からこの時間を捻出するスリルは授業中に放課後の遊びを考えていた少年時代に似ています。
 考えようによってはラジオ購入は子どものお小遣いでちょっと買うという領域を越えているかも知れません。ここにおじさんの出番があるわけで、あなたが楽しんだ後は受け継いでくれる子ども達にプレゼントすればいいではありませんか。30年前のラジオが充分に機能していることからも、私の命よりラジオの寿命の方が遙かに長いはずです。
 
 中波のラジオは夜間の電離層伝搬によって遠距離に届きます。基本的にラジオに求めるものは、取り込んだ電波の処理も大切ですが、入り口できちんと整えた信号を処理することでより良好な結果を招くもので、そこには必要以上の感度などという概念はもろくも崩れ去ってしまいます。
 ラジオや受信機はそれぞれ固有の特性があり、その癖を見破るのも面白さの一つです。メーカーに叱られても私が使った感想は別のページでお話ししたいと思います。


各地で異なる難易度
 こんなアホな趣味に足を踏み入れたのですが、私には強力な仲間がいます。40年来の友人ですが、彼の仕事は広域民放局の技術屋さんで、かなり前から密かに遊んで・・いや仕事を兼ねていたようで実に多くの検証を加えている尊敬すべき友人です。確実に私より確実に「アホ」です。
 その彼が言うには大阪で沖縄のラジオがどう聞こえるかを一つの目安にすることだという教えがありました。これは経験則から編み出した受信セオリーで、多くの意味を含みますがこのバロメーターは地域ごと時間ごとに大きく異なります。
 この難易度のレポートを蓄積することで多くの謎解きが可能です。その謎解きのために「聴く阿呆」の存在が不可欠であり、その数も重要な要素です。


 面白さをおしつけてはいけない!
 と、戒めていても興味のある実験結果は人に話したくなるものです。いや、わからないに人に話をしてもしかして・・の思いがあります。
 大昔「あなたにとって可愛い犬がよその人には恐い犬です。」・・なんて言うスポットアナウンスがNHKで流れていた時代があります。
 ラジオ世代の多くが興味を、中波ラジオ全国制覇を押しつけるつもりはありませんが、もしあなたが少年時代にラジオを作ったり、聞いたりすることが大好きだったなら、眠りにつく前にラジオのスイッチを入れて見るのも楽しいではありませんか。
  いつも言うように、人の楽しみではなく自分だけの楽しみをラジオが友になれることを祈って!!